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釧路地方裁判所 昭和42年(ワ)152号 判決

原告

角田川栄子

ほか一名

被告

株式会社計根別交通

ほか一名

主文

一、被告らは各自原告角田川栄子に対し金一、四〇四、七七〇円、原告河西ミチヨに対し金七一八、九五四円及び右各金員に対する昭和四一年八月六日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告らのその余の請求を棄却する。

三、訴訟費用はこれを四分し、その一を被告らの、その余を原告らの負担とする。

四、この判決は、原告ら勝訴の部分に限り仮に執行することができる。

事実

第一、当事者の求める裁判

一、原告ら

「被告らは各自原告角田川栄子に対し金五、一七四、三三七円、原告河西ミチヨに対し金二、五二六、〇六三円及び右各金員に対する昭和四一年八月六日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。」

との判決並びに仮執行の宣言。

二、被告株式会社計根別交通(以下被告会社と略称)

「原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。」

との判決。

三、被告水沼孝次郎

請求棄却の判決。

第二、原告らの請求原因

一、事故の発生

昭和四一年八月六日午前七時三〇分頃、北海道標津郡中標津町字計根別五〇線七号附近のカーブする道路上において、計根別方面から右地点に差しかかつた訴外伊原夫の運転する自動車(釧五あ三八四三号。以下甲車と略称)と、大麻方面から同地点に差しかかつた被告水沼の運転する自動車(釧五は三〇二号。以下乙車と略称)とが衝突したため、甲車に乗つていた原告角田川は入・通院約一〇ケ月を要する顔面挫創、両頬部皮下裂傷、右眼瞼部皮下切創、右眼瞼裂傷、頤部皮下切創、舌裂創、右第五指皮下切創等の傷害を受け、同じく甲車に乗つていた原告河西は、入・通院約一〇ケ月を要する右額面打撲並血腫、前頸部打撲症の傷害を受けた。

二、被告らの責任

被告会社は旅客運送業を営み、当時甲車を自己のために運行の用に供する者であり、被告水沼は当時乙車を自己のために運行の用に供する者であつた。

三、原告角田川の損害

原告角田川は前記傷害を受けたことにより、次のとおり合計五、三五一、三三一円の損害を蒙つた。

(一)  入・通院治療費 三二、六五〇円

(二)  附添費 八五、〇〇〇円

(三)  諸雑費 一六、九七三円

(四)  交通費 一九、九二〇円

(五)  逸失利益 二、一九六、七八八円

原告角田川は、本件事故以前から生活の一助として、護岸工事の雑役婦として稼働しており、五〇才に達するまで稼働する意思を有し、且つ稼働し得るものであつたが、本件事故のため入・通院中は勿論、現在でも眩暈、吐気等の後遺症が残存し、このため就労は著しく困難となつた。同原告の事故当時の平均年収は一八一、九〇〇円であつたから五〇才に達するまでの一七年間の就労不能による逸失利益は三、〇九二、三〇〇円であるが、ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を年毎に控除して計算すると、二、一九六、七八八円となる。

(六)  慰藉料 三、〇〇〇、〇〇〇円

原告角田川は、本件負傷のため八ケ月間に及ぶ入・通院を余儀なくされ、現在尚眩暈、吐気の後遺症が残存し、そのため生活の一助として獲得していた月平均一五、〇〇〇円の収入も閉ざされ、しかも、顔には、労働者災害補償保険法にいう障害等級表第七級に相当する女子の顔面に著しい醜状を示す傷跡を残し、この回復手術には入院六〇日間を要しその費用は八〇〇、〇〇〇円と予想されていること等の諸事情に照らせば、同原告の甚大な肉体的精神的苦痛を償うべき慰藉料は金三、〇〇〇、〇〇〇円が相当である。

以上(一)ないし(六)の合計五、三五一、三三一円が同原告の蒙つた損害であるが、被告水沼は治療費として一六、九九四円、見舞金として一六〇、〇〇〇円を支払つているので、これを除いた残金は五、一七四、三三七円である。

四、原告河西の損害

原告河西は前記傷害を受けたことにより、次のとおり合計二、七〇三、七八八円の損害を受けた。

(一)  入・通院治療費 六三、六五八円

(二)  附添費 一〇六、一〇〇円

(三)  諸雑費 九、〇八〇円

(四)  交通費 二二、九五〇円

(五)  慰藉料 二、五〇〇、〇〇〇円

原告河西は、本件負傷のため八ケ月間に及ぶ入・通院を余儀なくされ、昭和四一年一一月頃から外傷性大後頭三叉神経症麻痺の症状を併発し、現在頭痛、不眠症、眼球に霧がかかつたような自覚症状のある後遺症が残存し、右大後頭三叉神経症については手術施行のため入院二週間を要することが予想され、いつ完全に回復するか判らない状況にあり、しかも、生活の一助として雑役婦として年間約二〇〇、〇〇〇円程度の収入も今後閉ざされたこと等の諸事情に照らせば、同原告の甚大な肉体的精神的苦痛を償うべき慰藉料は、金二、五〇〇、〇〇〇円が相当である。

以上(一)ないし(五)の合計二、七〇三、七八八円が同原告の蒙つた損害であるが、被告水沼は治療費として二二、七二五円、見舞金として一五五、〇〇〇円を支払つているのでこれを除いた残金は二、五二六、〇六五円である。

五、よつて、被告らは連帯して、原告角田川に対し金五、一七四、三三七円、原告河西に対し金二、五二六、〇六五円及び右各金員に対する不法行為の日である昭和四一年八月六日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。

第三、請求原因に対する被告会社の答弁

一、請求原因第一項のうち、原告らの傷害の程度は争うが、その余の事実は認める。

二、被告会社が甲車を自己のため運行の用に供していたことは認める。

三、原告らの損害は争う。

第四、請求原因に対する被告水沼の答弁

一、請求原因第一項のうち、原告らの傷害の部位程度は争い、事故の日時は午前七時三〇分頃ではなく七時五〇分頃であるが、その余の事実は認める。

二、被告水沼が乙車を自己のため運行の用に供していたことは認める。

三、原告らの損害は争う。

なお、慰藉料の算定に際しては、次の点を斟酌すべきである。すなわち、被告水沼は、本件事故により被傷し中標津病院に入院したが、入院中も再三原告らの病状を見舞い、八月一九日退院後直ちに原告両名、原告らと共に甲車に乗つていて負傷した訴外都築チエ子並びに被告会社と、損害賠償について誠意を以て折衝し、訴外影山己蔵を仲に立てて八月二五日から九月末日まで月余に亘り再三示談交渉を続行し、訴外都築チエ子とは同人に二二五、〇〇〇円を支払うことにより円満に示談が成立したが、原告両名の要求は過大(原告角田川は五、〇〇〇、〇〇〇円、原告河西は三、二〇〇、〇〇〇円)であつたため被告水沼の経済状態からみて到底支払えないため示談は不成立に終つたのである。しかし、被告水沼としては、原告らが自認するように、原告角田川に対しては、治療費一六、九九四円を支払つた他に見舞金として一六〇、〇〇〇円を、原告河西に対しては、治療費二二、七二五円を支払つた他に見舞金として一五五、〇〇〇円を、支払つているのである。

第五、被告会社の免責の抗弁

一、本件事故については、(一)被告会社及び運転者の訴外伊原夫は甲車の運行に関して注意を怠つていないのであり、(二)本件事故は甲車の運転者・被害者以外の第三者たる被告水沼の過失によつて惹起されたものである。

すなわち、甲車の運転者訴外伊原夫は本件事故現場にさしかかつた際、この場所は進行方向に向つて左にゆるく曲つており、夏草も茂つていて見透も完全でないところから、時速約四〇粁の速度で走行していたのをやや減速すると共に道路の左側に寄つて注意しながら進行し、カーブに差しかかる約四〇米になつて対向して来る乙車を認めたので更に出来る限り左側に寄ると共に急停車の処置をとつた。

これに対して、被告水沼は乙車を運転し、道路の中央より進行右側の対向車の通行区分を進行して来たうえ、対向車である甲車を発見して狼狽の余りハンドルを左へ切るべきところを逆に右に切つたため甲車の進路を妨げる形で正面衝突したものである。

したがつて、被告水沼の過失は明白であり、訴外伊原夫としては、ゆるいカーブのため、通行区分を守らずカーブ内側を進行して来た対向車の発見も遅れ、発見後直ちに避譲措置をとつたが対向車がハンドルを逆に操作して進路を完全に防いで衝突したのであるから、右伊原には注意を怠つた点はない。

二、しかも、甲車には整備不良の点はなく、構造上の欠陥又は機能の障害はなかつた。

第六、抗弁に対する原告らの答弁

一、被告水沼に過失のあつたことは認めるが、訴外伊原夫が注意を怠つていないことは否認する。

二、甲車の構造・機能については知らない。

第七、証拠 〔略〕

理由

一、事故の発生

先ず、事故発生の時刻については、稲田商店前で原告らを乗せて発車したのは午前七時四〇分過ぎである旨の証人伊原夫の証言及び七時四五分頃どうしたのだろうと話をしているところへ車が来た旨の原告河西ミチヨ本人尋問の結果によれば、事故発生は、午前七時五〇分頃と認められ、原告らの傷害については、〔証拠略〕によれば、原告角田川は顔面挫創、両頬部皮下裂傷、左眼瞼部皮下切創、右眼瞼部裂傷、頤部皮下切創、舌裂創、右第五指皮下切創の傷害により昭和四一年八月六日から同年九月七日まで三三日間中標津病院に入院したこと、〔証拠略〕によれば同原告は退院後も通院を続け昭和四三年三月当時もなお二週間おきに釧路市内の谷藤病院に通院していることがそれぞれ認められ、〔証拠略〕によれば、原告河西は、右顔面打撲並血腫、前頸部打撲症の傷害により、昭和四一年八月六日から同年九月七日まで三三日間中標津病院に入院したこと、〔証拠略〕によれば、同原告はその後労災病院及び谷藤病院に通院し昭和四三年三月当時もなお通院していることがそれぞれ認められ、その他については請求原因第一項の事実は当事者間に争いがない。

二、被告らの責任

(一)  被告らが、それぞれ自動車損害賠償保障法(以下自賠法と略称)第三条の運行供用者であることは、当事者間に争いがない。

(二)  ところで、被告会社は、自賠法第三条但書の免責の抗弁を主張するので、この点について判断する。

本件交通事故発生について、被告水沼に過失のあつたことは当事者間に争いのないところであるが、甲車を運転していた訴外伊原夫にも過失が認められるか否かについて按ずるに、〔証拠略〕によれば、事故現場附近はゆるやかなカーブ(乙(ロ)第一号証の司法警察員作成の実況見分調書添付の見取図は、鋭いカーブであるように表示しているが、これは極めて不正確である)であり、甲車が対向車乙車を発見した場所ではやや見透が悪い程度であることが認められるのであつて、甲車を運転する訴外伊原夫が対向車を発見するのが遅きに失したものとは認められないのであるが、右の如き見透しの稍悪い場所においては、自動車運転者として減速すべき注意義務のあることは証人伊原夫の証言によつても認められるところ、同証人のカーブに差しかかつた際時速三〇粁に減速した旨の証言は、同証人のタコグラフの機械は付けていたがその時はテープが入つていなかつた旨の証言及び減速しなかつた旨の原告角田川栄子、同河西ミチヨの各本人尋問の結果に照らして措信できず、他に減速したことを立証するに足りる証拠はない。したがつて、右伊原が注意義務を怠らなかつたものと認めることはできず、自動車の構造上の欠陥又は機能障害のなかつたことについて判断するまでもなく、被告会社の免責の抗弁は認められない。

三、原告角田川の損害

(一)  治療費 一八、一九四円

〔証拠略〕によれば、治療費として病院に支払われた金額及び治療に要した氷代の合計は、一八、一九四円であることが認められる。その余の額が治療費として出費されたことについては立証がない。

(二)  附添費 四〇、〇〇〇円

〔証拠略〕によれば、附添婦として働いた武田平子及び安田きく野に対し各二〇、〇〇〇円を支払つていることが認められるので、その計四〇、〇〇〇円は損害として認めるべきであるが、門田ウタに対する四五、〇〇〇円の支出は付添費としては認められず、〔証拠略〕によれば、同原告には中学一年の子があり、同原告が働きに出ているときは子供が家事をしていたということが認められ、しかも〔証拠略〕によれば、入院期間は三三日であることが認められるのに門田ウタには一日一、〇〇〇円四五日分を支払つたのであることに照らし、右四五、〇〇〇円は被告らに賠償させるべき損害とは認められない。

(三)  諸雑費 七、一九〇円

〔証拠略〕によつて必要な経費と認められる眼鏡及びサングラス代計二、六五〇円(なお、七五〇円の二度目の眼鏡については原告の責任なので賠償を認めない)、右尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる甲第五号証の九によれば、同書証に掲げられた費目の出費のあつたことは認められるが、そのうち、中標津病院・釧路労災病院・標津役場・弁護士相談所関係の汽車賃・診断書(甲第五号証の五)、戸籍謄本に要した費用、釧路労災及び弁護士相談所へ出かけた際の弁当代のうち各一〇〇円、釧路駅弁護士相談会所在地間のバス代二往復分(金一〇〇円であることは公知の事実である)、労災病院関係のハイヤー代の合計五、〇九〇円及び原告本人尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる甲第六号証の費目中の弁当代のうち各一〇〇円の合計二、一〇〇円の合計七、一九〇円を以て、被告らの賠償すべき損害と認める。ハイヤー代一〇〇円の距離は比較的近距離であり、近距離の場合やバスを利用し得る場合においては特段の事情のない限り、ハイヤー代までも経費として認めるのは公平の原則に照らして妥当ではない。又弁当代も、近距離の場合は認めるべきではなく、遠距離の場合も、現実の出費額のうち損害賠償に値する一〇〇円の範囲においてこれを認めるべきである。

右に認容した以外の費目は、権利擁護のために必要なものとは認め難い。

(四)  交通費 一六、三八〇円

原告角田川栄子本人尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる甲第六号証に計上された費目のうち、一人分の汽車賃のみを必要経費と認めるので、その合計は、一六、三八〇円である。

(五)  逸失利益 零

〔証拠略〕によれば、昭和四三年三月現在、なお通院治療中であることは認められるが、五〇才に達するまでの一七年間の就労が不能である旨の立証はない。〔証拠略〕によれば、同原告は二二才で結婚して以来農業に従事して来たが、昭和三九年から、いわゆる出面とし稼働するようになつたこと、同原告方には自家用自動車もあることが認められるのであつて、同原告の稼働意思にも疑問があり、逸失利益については立証がない。尤も、昭和三九年、四〇年に、年間約一八〇、〇〇〇円の収入を得ていたことは慰藉料算定に当つて考慮することとする。

(六)  慰藉料

前記認定の如く、原告角田川は、本件事故のため三三日間中標津病院に入院した後も、昭和四三年三月現在尚、釧路市内の谷藤病院に通院していることが認められ、〔証拠略〕によれば、同原告は本件事故により当時生活の一助として得ていた月収約一五、〇〇〇円の収入の途を閉ざされたことが認められ、〔証拠略〕によれば、同原告の顔面には、労働者災害補償保険法にいう障害等級表第七級に相当する女子の顔に著しい醜状を示す傷跡を残し、この回復手術には入院六〇日を要し、費用は八〇〇、〇〇〇円と予想されていることが認められる。以上の諸事情に照らせば、同原告の慰藉料としては、一、五〇〇、〇〇〇円が相当である。

(七)  以上の合計は、一、五八一、七六四円となるが、被告水沼が一七六、九九四円を弁済していることは当事者間に争いがないので、これを控除した一、四〇四、七七〇円が被告らの原告角田川に対して支払うべき損害金となる。

四、原告河西の損害

(一)  治療費 三三、七一九円

〔証拠略〕によれば、原告河西は、治療費として三三、七一九円を支出したことが認められる。その余の額が治療費として支出されたことについては立証がない。

(二)  附添費 一五、〇〇〇円

〔証拠略〕によれば、附添婦として働いた斉藤コユルに対して一五、〇〇〇円を支出していることが認められる。これに対して、〔証拠略〕によれば、斉藤エンは、同原告の同居の実母であることが認められるので、同女に対して支払われたという九一、一〇〇円は、これを被告らに賠償させるべき損害とは認められない。

(三)  諸雑費 一〇、四六〇円

〔証拠略〕によれば、同書証に掲げられた費目の出費のなされたことは認められるが、そのうち、中標津警察本署、釧路人権擁護局、釧路警察本署関係は権利擁護のため必ずしも必要とは認められず、一二〇円以下の近距離のハイヤー代は損害と認めず、弁当代も標津、西別、釧路へ赴いた際の弁当代に限り一〇〇円の範囲で損害と認めるのが、公平の原則に照らして妥当である。したがつて、損害として認められるのは、六、一六〇円である。又、原告河西ミチヨ本人尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる甲第一三号証に計上された費目のうち、弁当代はそれぞれ一〇〇円の限度で計四、三〇〇円も損害として認めるのが相当である。したがつて、諸雑費として、一〇、四六〇円の損害を認める。なお、この項目は、原告の主張以上を認容することになるが、当裁判所は、交通事故に基づく損害賠償請求権は全体として一個の請求権と解するので、全体として原告の請求額以上のものを認容しなければ、民事訴訟法第一八六条に違反するものではない、と解する。

(四)  交通費 三七、五〇〇円

原告河西ミチヨ本人尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる甲第一三号証に計上された費目のうち、一人分の汽車賃及び労災関係のハイヤー代の合計三七、五〇〇円を必要経費と認める。谷藤病院関係のハイヤー代一〇〇円は近距離なので、これを損害と認めず、二〇〇円と計上された部分は、その根拠が明らかでないので、これも損害賠償の対象と認めることはできない。

(五)  慰藉料

前記認定の如く、原告河西は、本件事故のため三三日間中標津病院に入院した後も、昭和四三年三月現在、尚釧路市内の谷藤病院に通院していることが認められ、〔証拠略〕によれば、同原告には頭部外傷性後遺症、外傷性大後頭三叉神経症候群、頸椎変形症があることが認められ、〔証拠略〕によれば、同原告は昭和四一年六月、七月にはそれぞれ一一、七七二円、一六、八〇九円の収入を得ていたが、本件事故により生活の一助としていた仕事ができなくなつたことが認められ、以上の諸事情を総合すれば、同原告の慰藉料としては、八〇〇、〇〇〇円が相当と認められる。

(六)  以上の合計は、八九六、六七九円となるが、被告水沼が一七七、七二五円を弁済していることは当事者間に争いがないので、これを控除した七一八、九五四円が被告らの原告河西に対して支払うべき損害金となる。

五、結論

よつて、原告らの本訴請求は、被告両名は連帯して、原告角田川に対し一、四〇四、七七〇円、原告河西に対し七一八、九五四円及びそれぞれに対する不法行為の日である昭和四一年八月六日から完済に至るまで民法所定年六分の割合による遅延損害金を支払うよう求める限度で正当としてこれを認容し、その余を棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 篠田省二)

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